ケット第一号のなかへ変装してやってきた怪漢だった。そのとき三根夫は熱線をかれの変装のうえにかけ、つけひげなどをとかしてうち落とし、化けの皮をひんむいてやったことがある。その怪人ガスコが、こんな所にいたのである。
「ふふん。おれを知っていやがったか。ようし、そうなれば、なおさらきさまたちを許しておけないぞ。ここで、ふたりとも、息の根をとめてやるんだ。こら、動くな。手をあげろ」
 ガスコの両手には、いつのまにか、二|挺《ちょう》のピストルが握られ、その銃口は三根夫とハイロの胸もとに向いていた。もう、いけない。三根夫は両手をあげた。そのとき撮影録音機のはいっている包みがごとんと音をたてて下に落ちた。ハイロも、三根夫とおなじように手をあげた。


   信号灯


 ガスコは、すっかりいばってしまい、
「ははは。ざまを見ろだ。ここできさまたちふたりを片づけてしまえば、おれの立場は、ますます安全となる。おれは運がいいよ」と、みょうなことをいった。
 三根夫は、ちらりとハイロのほうを横目で見た。するとハイロは、首も手足もなく、服だけが両手をあげていて、ハイロの表情を知ることができなかった。これには
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