たよ、ハイロ君」


   天蓋《てんがい》の頂上《ちょうじょう》


 ハイロと三根夫は、あたりを警戒しながら階段に近づいた。さいわいに、誰もいないようすである。
「いよいよ、ここから階段をのぼりますが、ぜったいに声をだしてはだめですよ、いいですか」
 ハイロは、もう一度ねんをおした。そしてまんいち監視隊員に見つかったときは、三根夫は口がきけず耳が聞こえないということにし、ハイロが監視隊員に口をきくから、そのつもりでと、三根夫にいいふくめた。それから階段をのぼりはじめたのである。
 その階段は、螺旋形《らせんけい》にねじれて上へあがっていくようになっていた。階段のはばはかなり広かった。それをのぼりながら三根夫は壁がどんな材料でつくってあるのか注意して見た。その材料は、吊り橋や天井と同じ材料でできていると思われた。灰色だった。ちょっと指さきでさわってみた。つめたいかと思いのほか、なまあったかかった。そして弾力が感じられた。
(やはり、樹脂《じゅし》製らしい。しかしこんなに丈夫な樹脂にお目にかかるのははじめてだ)
 地球にある樹脂とはだいぶちがって、高級品だった。階段の高さは、三十メート
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