たときに思わず下においた秘密のカメラと録音機のはいっている四角い箱包みを、いそいで手につかんで、腋《わき》の下《した》にかかえこんだ。
ハイロは、前後へ気をくばりながら三根夫の手をとって、環状橋《かんじょうばし》の上を進む。
三根夫のほうは、注意をこの吊り橋と天井の構造にすっかり気をうばわれてそのほうへきょろきょろといそがしく目を走らせている。
(あッ、あそこに階段がある。やっぱりそうだ。あの階段をのぼると、天蓋の外へでられるんだな)
構築物は、みんなおなじ色をして、おなじ明かるさに照らされているので、よほどそばまでいかないと、階段や曲がり角や広間があることがわからない。なるほど、これでは下界から見あげても、天井や吊り橋などが見わけられないはずだ。
「ハイロ君。はやくあの階段をのぼろうじゃないか」と、三根夫はずんずんと足を早めた。
「あ、お待ちなさい。これから先が危険なんですよ。あの階段の下までいったあとは、ぜったいに、声をださないこと、それから足音をできるだけたてないこと、だまって上まであがり、それから一分間外を見てそれからまただまっておりてくるのですよ。いいですか」
「わかっ
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