上、手のとどきそうなところに、謎の構造をもった天蓋の、その裏側が見えるのだ。
 はるかに下の町から仰いだところでは、天蓋は、灰色または青色の布を張ったように見えていたが、こうして近くにきて観察すると、そんなやすっぽいものではなかった。それはすこぶる大きな軽金属製、あるいは樹脂《じゅし》製と見えるだだっ広い天井が、はてしも知れずひろがり続いているのだった。それはたいへんしっかりしたものに見えた。
 その天井の下には、やはりおなじ色の吊《つ》り橋《ばし》が、網《あみ》の目《め》のように、縦横《じゅうおう》にとりつけられ、どこまでものびていった。吊り橋は、天井から十メートルほど下にあり、パイプを組立てたような構造ではあったが、なかなかの偉観であった。しかもこの吊り橋を、天井の偉大さにくらべると、まるで講堂の天井に、小さい蜘蛛《くも》の巣《す》がかかっているほどにしか見えなかった。
「三根夫さん。もうちょっと向うへいったところで、あの吊り橋へ下りましょう。ゆっくり飛んで、ついていらっしゃい」
 案内者のハイロが、ひとり乗りの豆ヘリコプターを三根夫のそばへ近づけて、そういった。
「ハイロ君。あの
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