て、それに乗っていると、やや爪先《つまさき》さがりにぐるぐるとまわっているといつの間にか地階へつくのであった。エレベーターよりもいっそう進歩した仕掛けだと思われた。
「ほほう。これは温室村へきたようだ。うわあ、すばらしくひろい温室だ」
「しいッ。声が高い」三根夫は、ハイロから注意をうけた。
まったくすばらしい温室式の農場であった。いや、工場のような農場だといったほうがいいだろう。何段にも野菜の植わった棚《たな》があって、それがずらりと遠くまでならび美しい縞《しま》を見るようであった。太陽はない。上から特殊な光線がこの野菜棚を照らして、太陽の光りにあたるよりもずっとよく育つのだそうだ。また肥料もそれぞれの野菜に合ったものがじゅうぶんにあたえられ、植物ホルモンがうまく利用せられ、そのうえに、生長をたすける電波がかけられているので、野菜のできはいいし、その生長もたいへんはやい。
三根夫は、べつのところで、果物《くだもの》畑を見た。これもきちんと箱にはいって、ならんでいる。木の太さの割合いには、すばらしくたくさんのみごとな実がなっていた。これも人工的の特殊の栽培法が行なわれているためである
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