考えなんだろう」そう思うと、おかしさがこみあげてきて、三根夫は声をたてて笑った。
 その笑い声を、途中で三根夫は、はっととめなくてはならなかった。
「おやッ」
 例のお面の大きな目がぐるんと動いたような気がしたからだ。
(お面の目が動いた。あのお面は、すると、生きているのかな。そんなことはあるまい)
 三根夫は、ぞーッとさむ気を感じた。
「よく、見てみよう」かれは折《お》り尺《じゃく》を机の上からとって、それをのばしながら、机の上にあがった。かれの考えでは、机の上にあがり、それから一メートルの長さにのばした折り尺でもって、その奇妙なお面をつついてみるつもりだった。
 三根夫は、机のうえに立った。そして折り尺の一|端《たん》をにぎって、他の端《はし》を高くお面のほうへ近づけた。すると、お面の両耳が、ぷるぷるッと蝉《せみ》の羽根のようにふるえた。
「あッ」
 つづいて、二本の緑色の角が、にゅーッと前方へまがって、倍くらいに伸びた。象の鼻みたいな凸起《とっき》が、ぴーンと立ってその先がひくひくと動いた。そればかりか、お面全体が奥へひっこんだ。
「待てッ」
 三根夫は、このとき、やっとそのお面
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