びだしたしゃもじ[#「しゃもじ」に傍点]形の丸い耳がついていた。この耳も、愛嬌《あいきょう》があった。
 しかし奇妙なのは、この動物が頭のうえに持っている角《つの》であった。その角は二本であった。そして短かい棒のさきに、棒の断面よりもすこし大きい団子をつけたような、ふしぎな形をした角であった。そして色は緑色をしていた。顔全体は、あまり小さいでこぼこはなく、ゆったりとふくらんだり引っ込んだりしていて、感じはわるくないほうであったが、三根夫をへんな気持にさせたのは、いったいそのお面はなんという動物なのかわからないことであった。
 動物というよりも、お化けといったほうがいいようにも思われる。いや、お化けというよりもそういうへんな顔をした怪神《かいじん》とも見える。したがって、どこか人間の顔に近いところもある。牛や熊に近いところもあるが、よく見ていると、それよりも、むしろ人間くさい顔に見える。
 それはまあいいとして、なんだってあんな奇妙なお面をあそこへはめこんだのであろうか。誰がやったいたずらであろうか。
「ああ、そうか。帆村のおじさんのいたずらだよ。ぼくをおどろかして、笑いころげようという
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