ョン受影機に警報器。壁につってある富士山の写真のはいっている額。その他、みんなおなじことであった。
 いや。ただ一つ、見なれないものがあった。それは天井の隅の、換気用の四角い穴に、赤くゆでた平家蟹《へいけがに》をうんと大きくして、人間の顔の四倍ぐらいに拡大したようなもの――それは見たことのない動物の顔をお面につくったものであった――が、それが換気穴《かんきあな》のところへはめこんであったのだ。その顔のお面は、彫刻であるのか、ほりものであるのかよくわからなかったが、おどけた顔つきに見えた。その色は、いまもいったとおり平家蟹をゆでたような一種独特の赤い色をしているのだった。頭がでかくて、顔がでかくて顔の下半分はすこしすぼまっている。だから、せんす形だ。大きな二つの目がある、それは人間の眼とちがって、たいへんはなれている。耳に近いところにあるのだ。望遠レンズのような感じのする奥深い、そして光沢《こうたく》をもった目玉だった。その下に、象の鼻を小さくしたようなものが垂《た》れさがっている。それが、このお面をおどけたものにしていた。口はその下にかくれているのか、よくは見えない。目の横に、顔からと
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