いね」
「それでわかりました。隊長、三根夫君がこの籠にいれて飼っていた白い南京《ナンキン》ねずみが、この中からにげだして、奥へとびこんで、ハイロをおどろかしたのだろうと思いますよ」
「まさか。そんなかわいい小ねずみにおどろくようなことはないだろうに」
だが、それはほんとのことだった。帆村が奥へいってみると、料理場にちがいない部屋で、三根夫がはらばいになって、一ぴきの南京ねずみを一生けんめいに追いまわしていた。
その小ねずみが、つつーと走るたびに棚の上から食器やなんかが、がらがらとおちたり、カーテンがベリベリと破れて、床の上へ大きなものが落ちたような物音がしたり、それからまたひとりで箒《ほうき》が宙をとんだりした。
これらのふしぎな現象は、みんなハイロがにげまわって、さわいで起こすところのものであった。
「ハイロ君。こわがらなくていいよ。その小さい白い動物は、わたしたち地球の世界では、一番かわいがられる動物なんだ。一番おとなしくて、かしこいのだ。きみはすこしもおそれることはない」
帆村が落ちついた声で室内の見えぬ姿へ話しかけた。
その効果はあった。ハイロの声がいった。
「ほんと
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