関からなかへはいってみると、家具などがなかなかりっぱであった。
家の中には、誰もいなかった。さっするところ、博士ひとりが住んでいるらしい。
りっぱにかざられた広間に、一同は腰をおちつけた。
「ハイロ君、ちょっときてくれたまえ」
「はい、ただ今」誰もいないと思ったのに、となりの部屋と思うあたりで男の声がした。
緑のカーテンが、奥に面したところにかかっていたが、それがさっと一度だけ動いたのを三根夫は見た、と、かすかに足音が近づいて、やがてサミユル博士の横で声がした。
「ご用でございますか、はい」
「お客さまがたに、ちょっと一口、何かおいしいものをさしあげてください」
「はい、かしこまりました。さっそく用意をいたします」
姿が見えないハイロは、そういってさがっていった。
「いまだ、テッド君。時間はいくらもない。ハイロがコーヒーなどを持ってくるまでの五分間ほどが、ほくたちが自由に話ができる時間なのだ。重要なことがらだけを話しあいたいのだ」
サミユル博士は、テッド隊長の腕をつかんで、はや口にいった。老博士の額には脂汗《あぶらあせ》がねっとりとうかんでいた。これにはテッド隊長も緊張のてっ
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