のはんぶんが重傷を負うやら、なかには死ぬ者もあったが、いまはみんな元気です。このことはあとでゆっくり、お話しよう」
 と、ここではそれから先のことを話したがらなかった。一同はサミユル博士の家のほうへ歩きだした。三根夫は、目をみはり、耳をそばだてて、町の両側に注意し、いきあう人にも注意した。
 広場といい、道路といい、地球のうえで見る広場や道路にかわらないようであった。道路の両側にならんだ店や家も、地球の上で見るそれらとあまりかわったところがなかった。もっとも店は、たいへん美しく飾りたてられてあり、商品は豊富であった。料理店が店頭にかかげてある料理の品目も、おなじみなものばかりだった。だが、三根夫は、ついにかわったことを発見した。
「ねえ、帆村のおじさん。このへんの店は、へんですね」
 帆村に話しかけた。帆村はにやりと笑って三根夫を見おろした。
「何に気がついたのかね」
「だって、へんですよ。店には、だれも店番をしている者がないじゃありませんか。どの店もそうですよ」
「なるほど。それから……」
「それから? まだ、へんなことがあるんですか」
 三根夫は小首をかしげて考えこむ。
「ああ、そ
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