である。
 ただ、どうしても腑《ふ》におちないのは、『宇宙の女王』号の場合は、気温の急上昇があったりなどして、乗組員はかなり苦しんだようであるが、本艇の場合には、それがなかったことだ。これはなぜだろう。まだ解くことのできない謎だ。
 さて偵察団の一行五名は、おそるおそる橋へ足をかけた。もしこれが妖怪屋敷《ようかいやしき》のなかのまぼろしの橋だったら、あっという間に身体は奈落《ならく》へ落ちていくはずだった。
「大丈夫だ。きたまえ」テッド隊長はさすがにひと足さきにみずから試験をしてみて、大丈夫であることをたしかめると、つづく者に渡れと合図した。そこで残りの四名も橋を渡りだした。横から見たところはなんだかひょろひょろしたあぶなっかしい橋であったが、こうして渡ってみるとすこしもゆれず、きしむ音もなく、しっかりしたビルの廊下を歩いているのとかわりがない。
「この橋の材料は、なんでできているの」帆村がポオ助教授に聞く。
「さっきから目をつけているんだが、これはめずらしい金属だ。われわれの知らない合金《ごうきん》らしい」
 助教授は、ざんねんそうに答えた。橋を渡り切ると、なるほどエレベーターがあっ
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