を八つに折りたたんで、革製の名刺入れのなかにつっこんだ。
「さあ、でかけよう」
 伯父は寝衣をぬいで、外出用の服に着かえた。たった一分しか、かからない。それから机の上の雑品をあつめてポケットへつっこんだ。それから戸棚《とだな》から一個のトランクをだして、手にさげた。
「ミネ君。でかけるが、きみの準備はいいかい」
「待ってください、伯父さん。ぼくはこれから荷造《にづく》りをするのです」
「おやおや、そうかい。……でもまだ三十分時間があるね」


   救援艇の出発


 ニューヨークのエフ十四号飛行場から、十台の救援ロケット艇がとびだしたときの壮烈なる光景は、これを見送った人びとはもちろん、全世界の人びとにふかい感動をあたえた。
 帆村荘六と、甥の三根夫少年は、テッド隊長の乗っている一号艇に乗組んだ。
 各艇とも、乗員は三十名であった。
 遭難をつたえられるサミユル博士搭乗の『宇宙の女王《クィーン》』号にくらべると、搭乗人員ははんぶんであるが、そのかわりこの救援ロケット艇は、最新型の原子エンジンを使っているので、ひじょうなスピードをだすし、またその航続距離にいたっては十億キロメートルを越
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