きだったのである。
 それからしばらくいった先の店で、かれは一ちょうの丈夫なパチンコを買った。さらにその先の店で、硝子《ガラス》のはまった木箱のなかで、じぶんの身体よりもずっと大きい車をくるくるまわしつづけるかわいい白鼠《しろねずみ》を買った。それは三つの車がついている一番いい白鼠の小屋に、白鼠を七ひきつけて買った。
 オルゴール人形、パチンコ、車廻しの白鼠の小屋――なんだかあまりひつようのように見えないへんな買物であるが、とにかくときのはずみで三根夫はそれを買ってしまったのである。いわば、よけいなフロクの買物であった。
 しかしこのフロクの買物が、やがて三根夫にとって、思いがけないたいへんな役目をつとめてくれることになろうとは、さすがに気がつかなかった。
 三根夫がかえってみると、伯父の帆村はやっぱり寝衣《ねまき》のうえにガウンをひっかけたまま、暗号器を廻しつづけていた。別になんの出発準備をすすめているようすもない。
 が、帆村は、三根夫がその部屋へはいっていったとき、
「やれやれ、間にあったぞ」
 ひとり言をいって、暗号器から一枚の紙をぬきだしてほっと一息つくと、その紙片《しへん》
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