テッド隊長以下、すべての乗組員の頭のなかにあった。
「ご親切なることばに感謝します。ですが……」と隊長テッド博士は、あいさつをはじめた。
「ですが、われわれはいま、どういうところにいるのでしょうか。またあなたは、どういう方ですか。われわれには、あなたのお姿が見えないのです」
 こっちからの話が、相手につうずるかどうか、博士には自信がなかったが、それはともかく、いいたいだけのことをいってみた。すると、相手が返事をした。
「いろいろ疑問をもっておいでのことは、よくわかります。今、それについて完全なるお答えをすることができません。それは、わたしどもが秘密事項をあなたがたに知られたくないというのではなく、完全なるお答えをして、あなたがたにわかっていただくには、かんたんにはいかないからです。つまり、かなりの時日《じじつ》をかけないと、おわかりになれないと思うのです。ですから、質問のすべてを一度にとくのはおやめになって、これから毎日すこしずつ、市街を散歩するなりだれかと会って話しあうなりして、だんだん疑問をといていかれたがよいと、それをおすすめします」
 相手は、ますますねんのいった話しかたで博士
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