にこたえた。相手のいうことは、ようするにこの国には、きみたちの常識では解けないような、いろいろなふしぎがある。それを一度にとこうとすると、気がへんになるかもしれない。だからゆっくりこの国に滞在して、ゆっくりと疑問をといていらっしゃいといっているのだ。博士は、かるくうなずいて、相手がいったことを頭の中で復習した。これはぜひおぼえておかなくてはなるまい。
「ただ、いまのおたずねについて、これだけはお答えしておきましょう。このところが、どんなところであるかを知るには、橋をわたりエレベーターで下り、市街を歩いてごらんになると、まず、早わかりがするでしょう」
「ああ、そうですか」
「それから、わたしの姿が見えないことです、これはちょっとしたからくりを使っているのです。こっちから説明しないでも、やがてみなさんのほうが、なあんだ、あんなからくりだったかと、気がおつきになりましょう。それはとにかく、いずれそのうち、よい時期がきたらわたしどもは、みなさんの目に見えるように、姿をあらわします。それまでは、私どもの姿が見えないほうがよいと思うので、決してわたしどもは姿を見せません」
「そうおっしゃれば仕方が
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