れわれをふしぎな目にあわせるかもしれません」
「うん。覚悟はしているよ」
 このあとで、テッド隊長は命令を発して、ついに本艇の一番大きい戸口の扉をひらかせた。
「やあ。とうとう扉を開いてくださいましたね。みなさん。よく、ここまでいらっしゃいましたね。これから仲よくいたしましょう」
 相手の声が、はっきりと聞こえた。だが、ふしぎなことに、その相手の姿はどこにも見えなかった。姿なきものの声だ。なんという気味のわるいことであろう。


   魔か人か


 テッド博士は、救援隊の幹部とともに、開かれた扉のほうへわるびれもせず、進んでいった。博士は、ここしばらくの間が救援隊全員にとって、もっとも重大なときだと感じていた。
 相手は鬼か、神か、魔物か怪物か、なにかは知らない。しかしいかなる相手にもせよ、博士は身をもって隊員たちの生命の安全をはからねばならないと、かたく決心していた。
 なるほど、空気のことは心配ないようだ。そのままで呼吸にさしつかえない。いったん空気服を身体につけた者も、ぼつぼつそれを脱ぎはじめた。帆村の判断は正しかったのだ。
 それにしても気味のわるいのは、声のする相手の姿が見
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