らく、じぶんの小さい脳髄《のうずい》だけでは持ちきれないほどの推理こんらんになやんでいるのだろう。
「とにかく、さっききみは見たろう。星がどんどん姿を消していったのを。最後に窓のように残った図形の星空、それが見ているうちに、まわりがだんだんちぢまって、やがて星空は完全に消えてしまった。そして大暗黒がきた。そうだろう」
「そのとおりですけれど」
「つまりね、あの大暗黒が、怪星ガンの一部分なんだ。われわれは怪星ガンにすっかり包まれてしまったんだ」
「すると怪星ガンは霧のようなものですかねえ。それともゴムで作った袋みたいなものかしらん」
「そのどっちにも似ている。けれども、それだけではない。そのうちに、もっと何かあるんだと思う」
 帆村は、謎のような、ぼんやりしたことをいう。
「もっと何かあるって、何があるの」
「あれだ。あのようなものがあるんだ」
 と、帆村は下からのびてきた光る怪塔を指した。
「あれはなんでしょう。高い塔のようなもの」
「つまり、怪星ガンのなかにはあのように、しっかりした建造物があるんだ。霧かゴムのようにふんわり軟い外郭《がいかく》があるかと思うと、そのなかにはあのような
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