、あのような塔の形をした交通路を、本艇のそばまでとどかせてやらなくてはならない、相手はそう考えたんだろう」
「塔が交通路なんですか。どうしてですか」
「もうすこし見ていればわかるのではないかなあ。ほら、塔の先から、こんどは横向きに、籠《かご》のようなものが伸びてきたではないか」
「あッ。ほんとだ」
 伸びるのがとまった塔のてっぺんは、すこしふくれていたが、そこから籠のようなものが横向きにぐんぐん伸びて本艇の方へ近づいてくるのであった。
「おそろしい相手だ」
 帆村が、ひとりごとをいった。
 それを聞きとめた三根夫は、
「帆村のおじさん。さっきから、おじさんは相手がどうしたとかいいますがね、相手とはだれのことですか」
「あの塔の持主のことさ。ああして塔をぐんぐんと、われわれのほうへ伸ばしてよこすのはだれか。それがおじさんのいう相手さ」
「だれなんですか、その『相手』は」
「本艇をすっかり暗黒空間でつつんでしまった『相手』だ。本艇の電波通信力をなくしてしまった『相手』だ。いくら本艇が噴進をかけても、一メートルも前進させない『相手』だ。これだけいえば、ミネ君にもわかるだろう」
「わからないね
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