よ」
「また、さっきの議論のむしかえしか」
「いや、そうとってもらっては困る。とにかくわれわれは、頭のなかを一度きれいに掃除しておいて、そのきれいな頭でもって、われわれの目のまえに次々にあらわれる大宇宙の驚異《きょうい》をながめる必要がある。そうでないと、その驚異の正体を、はっきり解くことができないからねえ」
「おやおや、すてきに大きい塔だ。どう見ても塔だ。わたしは気がたしかなのであろうか」
 白光につつまれたその巨大なる怪塔は、下からぐんぐん伸びあがってきてやがて本艇と同じ高さにたっした。本艇の窓という窓には、艇員の顔があつまり、びっくりした顔つきでその光る怪塔を見まもる。
「帆村のおじさん。あの塔はなんでしょうか」
 三根夫は、このときやっとわれにかえり、帆村に質問をかけるほどのよゆうができた。
「はっきりはわからないが、あれは相手がわれわれに、一つの交通路を提供しようというのじゃないかなあ」
「なんですって」
 三根夫にとっては、帆村のいうことがさっぱりわからなかった。交通路の提供だの、相手だのというが、なんのことだろう。
「つまりだ、相手は、われわれに会いたいのだ。会うためには
前へ 次へ
全239ページ中108ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング