に大きな力を持っていると思われる。あのきみょうな放電現象によって、本艇の外廓《がいかく》のうえには、黒いペンキのようなものが塗られた。そのために外が見えなくなった。この考えはどうですか」
「なるほど、その説によると、外界《がいかい》が見えなくなったことは、説明できるが、しかし本艇がガスを噴射しているにもかかわらず、すこしも前進しないのは何故かという説明がつかない。それとも、このうえにもっときみは説明をくわえますか」
「その黒いペンキのようなもの――それは非常にねばねばしたもので、われわれにはちょっと想像もできないが、それはしっかり本艇を宇宙のある一点へとめているのではなかろうか。つまり蠅《はえ》がとりもちにとまって動けなくなったとおなじように、本艇は、そのねばねばしたまっ黒いものに包まれ、そして動けなくなったのではないですかな」
「その考えはおもしろいが、しかしそれは想像にすぎない。想像ではなく、もっとはっきりした事実をつかまえ、そのうえに組立てた推理でなくてはならない」
「ですが、地球のうえならばともかく、このように宇宙の奥まで入りこんでいるのですから、ここではだいたんなものさし[#
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