ませんか。また宇宙塵の中といえども、本艇は噴進することができるはずであるが、実際本艇は一メートルも前進することができないのです。ですから宇宙塵の考えは正しくない」
「では、きみは何と考えるのですか」
「わたしは暗黒星《あんこくせい》へ突っ込んだのではないかと思いますよ」
「それはおかしい。暗黒星のなかへ突っ込んだものなら、そのときにはげしい衝突が感ぜられ、本艇は破壊するでしょう」
「いや、暗黒星には、ねばっこい液体からできているものもあると思うのです。そういうものの中へ突っ込めば、かならずしも破壊が起こりはしない」
 みんなの議論がかっぱつになった。
「諸君は、もっとも大切なことを見のがしておられる。それは星の光りが消えはじめるまえに、本艇はうす赤い光りで包まれていたことだ。あの光りはなんであろうか。あのふしぎな光りの謎をまず解かなくてはならない」
「おお、それはいいところへ目をつけられた。きみは、どう解くのか」
「わたしの考えでは、本艇は、なにかの外力をうけて、あのきみょうな放電現象となったのであろうと思う。その外力はなにものか、それはまだわかっていないが、ともかくもその外力は、非常
前へ 次へ
全239ページ中104ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング