と。……うまい。ミネ君。うまい表現だ。うまいいいあらわしかただ」
 と、帆村が感心していった。
「なるほど、そのような感じだ」
 隊長も、うなずいた。
「ああ、黒い袋の口が、ついに閉まる。みなさん見ていますか」
「見ているとも……」
 一同は、いいようのない気味わるさをもって、天空《てんくう》にのこされた最後のせまい星の光りが消えていくのを見まもっている。
「あ、消えた」
「とうとう消えた。完全な暗黒世界だ」
「暗黒の空間なんて、はじめて見知ったよ。ああ、おそろしい」
「大宇宙が、消えてしまったんだろうか。地球へもどるには、どうすればいいのだろう」
 恐怖のことばが人びとの口からほとばしった。こんな異変は、テッド博士も経験したことがなかった。
「ああ、もうだめだ。本艇の噴進もきかなくなり、昼の光りさえ見えない暗黒世界へ閉じこめられてしまったのだ。わたしたちは、もう何をする力もない」
「そうだ。われわれを待っているものは燃料の欠乏だ。食料がなくなることだ。そしてみんな餓死《がし》するのだ。ああ、おれは餓死するまえに頭が変になりたい」
 もはや『宇宙の女王』号の救援どころではない。じぶんた
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