くありさまをじっと見まもっていたが、このときおどろきの声を発して、隊長テッド博士に呼びかけた。
「隊長。もうしばらくのうち星の光りは全部消えてしまいそうです。残っているのはあそこだけで、ふしぎだなあ、残っている星の群れは、円形の中にはいっています」
「なるほど。これはまた奇妙だ」
「ほら、ごらんなさい。円形の窓から眺めるような星の光りが、だんだん小さくなっていきます。窓がだんだん小さくしぼられていくようだ。ポオ君、見ていますか」
「見ているとも、帆村君」と助教授は帆村の肩へそっと手をかけた。
「まったくふしぎだね。こんな異変が天空に起こるという報告を、これまでに一度も読んだこともなければ、聞いたこともない。じつにふしぎだ。しかしこれは夢ではない。われわれは皆で、さっきからこの天の涯《はて》の異変をたしかに見たのだ」
「ねえ帆村のおじさん。ぼくは、とても大きい黒い袋のなかに包まれていくような気がします。おじさんは、そう感じないですか」
さっきから、だまってこの異常なできごとを見まもっていた三根夫少年が、このとき帆村の服のはしをひいてこういった。
「なに、黒い袋のなかに包まれていくようだ
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