ばにするんだ。そうしてたばにした宇宙線を、地球じょうで一番かたい金属材料としてしられているハフニウムG三十番|鋼《こう》にかけると、どんな場合でも、まず百分の一秒間に、まっ赤に熱し、たちまち形がくずれてどろどろになり、そしてつぎの瞬間に全体が一塊のガス体となって消え失《う》せる。どうだ、宇宙線レンズはすごい力を持っているだろう」
「へへえッ、それがほんとうなら、大した破壊力を持っていますね」
「破壊力だけで感心してはいけない。またかなり遠方まできくんだ。原則からいうと、無限大の距離でもとどくんだが、まだすこし集めて一本にする技術が完全というところまでいっていないので、まず、四、五千メートル以内なら有効にはたらく」
「四、五千メートルまでなら、じゅうぶん使い道がありますよ。やくに立ちます」
「やくに立たないものなんか、わしは持ってこない。そこでだ、この宇宙線レンズの力を借りて、きょうはテッド博士のひきいる九台のロケットを全部焼いて、九つの煙のかたまりにしてしまおうと思うんだ。しっかりやってくれよ」
「きょうのうちにですか。それはどうも」
と、事務長が艇長の気ばやいのにおどろいてるおりしも、外から電話がかかってきた。
「艇長ですか、テッド博士外一名が、これから二十分後に、こっちへきて、面会したいといって無電をかけてきました。どう返事をしましょうか」
「ふん、そうか」と艇長はちょっと考えて、
「わしのほうからうかがいますといってくれ。なにしろきのうは失礼しましたから、きょうはわしのほうがでかけますというんだぞ」
艇長は、電話を切ったあとで、
「ちょうど、都合がいい。これから向うへいって、相手のようすをよく見てきてやろう。うまくゆけば、テッドのやつの頭を変にしてやろう」
と、平気な顔で、そういった。
いよいよ救援隊にとってゆだんのならない事態になってきた。あやしい、あやしい。
猫かぶりの客
救援隊ロケットの司令艇では、とつぜんのお客さんをむかえる準備にいそがしい。
なにしろあの傲慢で、やくそくもなんにも平気でやぶって、かってなふるまいをしてはばからないゴロツキ艇ギンネコ号の首脳部が、きのうとはうってかわり、わざわざこっちへくるというのであるから、テッド隊長以下の面くらったのはあたりまえだ。
「ギンネコ号から、形の小さいロケットが発射されました。大き
前へ
次へ
全120ページ中42ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング