三びき死んで四ひきとなった。しかしその後はどんどん子鼠が生まれて、一時は五十ぴき近くになった。
 五十ぴきにもなると、食物の関係や、場所の関係があって、それ以上にふやせないことになった。そこでそれ以上にふえると、かわいそうだが、かたづけることにした。
 白鼠の運動を見ているのは、楽しい時もあったが、地球を出発してからもはや百日に近い。白鼠の車まわしに見あきたのもあたりまえだろう。
「ねえ、帆村のおじさん。いったいいつになったら『宇宙の女王《クィーン》』号に追いつくんですか」
「さあ、それはいつだかわからないが『宇宙の女王』号が消息をたった現場まではあと二、三日でゆきつくそうだよ」
「えっ、それはほんとうですか」
 三根夫は、『宇宙の女王』号の姿ばかりを追っかけていた。しかしよく考えてみると、それは今どこにいるかわからない。遭難しないで動いているとしても、あれから四カ月ちかくの日が過ぎたことであるから、その間にどこまで飛んでいったかわからない。
 また遭難してじぶんの力で動けなくなったとしても、地上とはちがうんだから、それから四カ月ものながいあいだ、おなじ空間にじっとしているとは思われない。どの星かの重力にひかれて動いていったことだろう。それもそろそろと動くのではなく、谷間に石を投げ落とすときのように加速度をくわえて飛んでいったかも知れない。
 が、帆村のおじさんの話によって、そこまで探しあてるまえに、遭難地点の附近をしらべる仕事があることに気がついて、三根夫はなんだかきゅうにたいくつから救われたような気がした。あと三、四日で『宇宙の女王』号の遭難地点にたっするとは、なんという耳よりな話であろう。
 三根夫は、いまやすっかりきげんがよくなった。このところさっぱり訪問をしなくなっていたところの操縦室へも、たびたび顔をだすようになった。
 そのかいがあった。
 それは翌日のことであったが、操縦士のところへ遠距離レーダー係から、
「前方に宇宙艇らしい形のものを感ずる、方位は……」
 と知らせてきたので、にわかに艇内は活発になった。
 もちろん隊長テッド博士も操縦室へすがたをあらわし、手落ちなく僚艇へ知らせ、監視を厳重にした。
 艇内では、この話でもちきりだ。
「やっぱり『宇宙の女王』号は、遭難現場附近にいたね」
「どんなことになっているかな。生き残っている者があるだろうか」
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