ないと思います。その怪人物を至急捕えなくてはなりません。おゆるしくだされば、わたしはすぐにニューヨーク・ガゼットのカークハム氏に連絡して、検察当局へ届けてもらいます」
「いや、こうなれば、わたしも責任上、公電をうって、この怪事件についての新しい発見を報告しなければならない」
そこで隊長からいっさいのことが地球へむけて通信せられた。
読者は、その怪しい松葉杖の人物が、スミス老人によって、宇宙の猛獣使いとよばれたことをおぼえていられるだろう。
スミス老人は、ほかの人たちが知らないことを知っており、ほかの人たちよりもずっとまえから、あの松葉杖の男に目をつけていたのである。
だが、スミス老人は、かの怪人物についてどれだけのことを知っているのか、今はまだわかっていない。
テッド博士からの報告により、検察当局ではさっそく大捜査《だいそうさ》をはじめた。
だが、だいぶ日がたっていることでもあり、かんじんの人物が覆面しており、そして服装はといえば、ふだんのガスコ氏とおなじようであったので、その本人を探しだすのはたいへんむずかしかった。
せめてスミス老人か、老人のまわりに集まっていた婦人連とでも連絡がつけば、すこしは手がかりらしいものも見つかったであろうが、あいにく検察当局はこれらの人びとに出会う機会がなかった。
「ガスコ氏に似た怪人物の手がかりが見つからない。もっと資料を送っていただきたし」
そういう暗い報告が、検察当局からテッド博士のもとへとどいた。
遭難現場近し
三根夫《みねお》は、音《ね》をあげないつもりであった。しかしとうとうがまんができなくなって、三根夫は帆村荘六《ほむらそうろく》にうったえた。
「おじさん。どうもたいくつですね」
帆村荘六は、本から顔をあげて、目をぐるぐるまわしてみせた。
「そんなことは、いわない約束だったがね。それにミネ君は、いろんなおもちゃを艇内へ持ちこんでいるじゃないか」
「それと遊ぶのも、もうあきてしまったんです」
オルゴール人形、パチンコ、車をまわす白鼠《しろねずみ》ども――これだけのものを持ってはいったのであるが、もうあきてしまった。
白鼠の小屋の掃除をするのが、一番たいくつしのぎになる。といっても、これをいくらていねいにしてみても、ものの二十分とはかからない。
白鼠は、はじめ七ひきであったが、まもなく
前へ
次へ
全120ページ中22ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング