へん》によって、不幸にも漂流器をこわされ、あるいは身体に致命傷《ちめいしょう》をうけた人びとだった。
その救助のときはそうかんだった。
九台の僚艇は、全部が六号艇の遭難現場のまわりに集まってきて、四方八方から六号艇のほうへ強力なる照空灯で照らした。あたりは光りの海と化した。六号艇からふきでる火災の煙が、地上の場合とははんたいに、照明をたすけた。顕微鏡で見たみじんこ[#「みじんこ」に傍点]のような形をした空間漂流器が、明かるく光る。それを目あてに、救助作業がはじまったのだ。
しかし六号艇が爆発して飛び散ったときには、みんなひやっとした。それは破片がとんできてじぶんの艇をぶちこわしはしないだろうかと、きもをひやしたのだった。だがさいわいにも、それによる損傷はなくてすんだ。
ゲーナー少佐は、司令艇に救助された。
救援隊長のテッド博士は、少佐をむかえて、しっかり抱きしめた。
「けがはないのかね」
「たいしたことはないです」
「ほう。やっぱりけがをしているんだね。ドクトル、手当をたのみます」
医局長がすぐに手当にかかった。両手と左脚をやられていた。手のほうは火傷《やけど》だ。
「隊長、倉庫員のモリが重大なる発見をしたのです。それは……」
と、少佐は傷の手当をうけおわるのが待っていられないというようすで、艇長に報告をはじめた。
艇長テッド博士は、非常におどろいた。
そばに、それを聞いていた人たちも顔色をかえた。
聞きおわった艇長は、何おもったか、ものをもいわず、いそいでそこを去った。そして司令室にはいった。
「いそぎの命令だ、各艇に時限爆薬がかくされているおそれがある。各艇はすぐさま艇内を全部しらべろ。六号艇の爆破の原因は、時限爆薬のせいとわかった」
隊長は僚艇に無電で命令をつたえた。
たしかにそのおそれがあった。六号艇が特別にねらわれる理由はないようだ。だから時限爆薬は、他の九台の艇にもかくされているおそれはじゅうぶんであった。
この命令をうけた各艇は、ふるえあがった。そんなぶっそうなものがあっては一大事だ。各艇は総員を集め、大至急で艇内の捜査をはじめた。
そのけっか、隊長テッド博士のはやい命令がよかったことがわかった。というのは、第二号艇と第三号艇と、それから博士が乗組んでいる司令艇と、この三台の艇内に、やはり時限爆薬がかくされていたことがわかっ
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