い。
サミユル博士の『宇宙の女王』号もぶじアメリカに着陸した。博士をはじめ乗組員はすくない燃料にあきらめの心を持っていたが、脱出してみると、地球は意外の近くにあったため、帰着するまでにそれだけの燃料でじゅうぶんありあまったのである。テッド隊は、ついに救助の任務をはたして、全世界かち隊員全部が大賞讃をうけた。三根夫少年は、なかでも大人気で、新聞社や放送局からひっぱりだこのありさまだった。かれはいつも少年らしいむじゃきな話ぶりをもって、怪星ガン――じつはガンマ星のことや、ふしぎなガン人種のことについて、全国の少年少女たちに物語るのであった。
ただざんねんなのは、ガンマ和尚《おしよう》が、あれほど熱心に希望したガン星文化の資料が、本艇へとどけられないうちに、本艇はガン星からとびだしてしまったことだ。テッド博士はざんねんがっている。そしておなじ志《こころざし》のポオ助教授と帆村荘六とが、いまは博士の下で、『ガン星およびガン人の研究』という論文をつくっているという話だ。最後に、地球から見たガン星の最後について、一言のべておこう。天文台《てんもんだい》は急速にちかづく彗星を発見して、ただちに全世界の天文台へ通報した。
この彗星の速度は、じゅうらいの彗星よりもはなはだ速く、そしてその翌日には、あっというまに、地球と火星の間を抜けて飛び去った。それは深夜のことだったが、通過のさいは、約三時間にわたり、まるで白昼《はくちゅう》のように明かるかったという。そしてその彗星は、ひとつのものと思われ、テッド隊員がしきりに知りたがっているようなガン星の姿はぜんぜんみとめられなかったという。それから考えると、おそらくもうそのときまでに、ガン星はアドロ彗星の腹中《ふくちゅう》へおさまっていたのであろう。ガンマ和尚やハイロ君の運命については、もちろんなにも知られていない。
宇宙は広大であり、古今は長い。そして地球人類の科学知識はあまりにもうすく、そしてせまい。われらは、自然科学について知ること、あたかも盲人が巨象の片脚の爪にさわったよりも知ることがすくないのだ。われわれは、いそいで勉強しなくてはならぬ。それは地球人類のゆるぎなき幸福のために、ぜひひつようなのである。
底本:「海野十三全集 第13巻 少年探偵長」三一書房
1992(平成4)年2月29日初版発行
※「ミネ君」、「三根
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