球人類にお願いして、われわれがこれまで盛りあげてきたガンマ星文化というものを、できるだけたくさん、ここから持っていっていただきたいのです。わしは、それがやがて地球上において、地球人類の手で研究される資料となることをのぞむものです」
「おどろいたご相談です。お引受けする気持はありますが、どうしたらいいか……」
「われわれは大宇宙の研究に乗りだして、もう五百年いじょう経っているのです。さいきん地球と地球人類に興味を持ちまして、このまえは『宇宙の女王《クィーン》』号をとらえたのです。まことに失礼なことをしたわけだが、あれはわしとして、どうしても手に入れたかったので、捕獲《ほかく》したわけです。そして非常によろこんだ。そこへあなたがたがきたものだから、ますます喜んで、中へはいっていただいたのです。が、失礼はおゆるしください。一方的なやりかたで、すみませんでしたが、わしとしては、もうすこしさきになったら、ここであなた方ときもちよく共同研究をする夢をいだいていたのです。だが、いまになって、そんな申しわけをしても何のやくにも立ちません。さあ、お願いしたことを引受けてください。わしは、部下たちにいいつけて、いままでの文化記録を大至急、あなたのところへはこびこませることにします。どうぞ、よろしく。もう時間もないのです」和尚は席から立ちあがった。

「待ってください、ガンマ和尚。あなたは、われわれが、ふたたび地球へもどれるものと思っていられるようだが、われわれはそんなことができようとは、考えられないのですがね」
「いや、機会はかならずきます。あなたがたは優秀な人たちです。あなたがたが、機会をつかまえそこなうということはないと信じます」そういったときガンマ和尚は、電気にうたれたように身体をびくっとふるわせた。かれは席をはなれた。
「わしはじぶんの部署へもどらねばなりません。では諸君の幸運と冷静と勇気とを祈りますぞ」
 ガンマ和尚とその部下は、風のように、部屋から走り去った。


   大団円


 その直後、事態はきゅうに重大となった。アドロ星の撃ちだす破裂弾《はれつだん》の射程《しゃてい》が、いまやガンマ星にとどくようになったらしく、しきりに空気は震動し、本艇はゆさゆさと揺れだした。また、ときおりどこからさしこんでくるのか、目もくらむほどの閃光《せんこう》が頭上で光ることがあった。
 
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