ぶんの配置につかなくてはならないんです」ハイロは三根夫をうながして、天蓋のところから階段をおりかかる。
するとうしろにガスコの声が聞こえた。
「わっはっはっはっ。ざまを見ろ。どいつもこいつも、泣《な》き面《つら》をして吠《ほ》えられるだけ吠えろというんだ。宇宙第一の自由星だなんていばっていて、このざまは何だ」
三根夫はハイロの腕をひきとめて、ガスコの無礼きわまる悪口をがまんして聞き入った。
「怪星ガンがなんだい。ガンマ和尚《おしょう》がなんだい。おれがちょっと宇宙の一角へむけて信号すればたちまちガン星は死相《しそう》をあらわす。ふふン、おれの力も、こうなるとなかなかたいしたものだぞ」
ガスコは、好きなことをしゃべり散らしている。三根夫はたいへん腹が立った。
「ハイロ。ちょっとここに待っていてくれたまえ」
「えッ。どうするんですか三根《みね》さん」
「どうするって、大悪人ガスコをあのままにしておけるものか。あいつはスパイを働いているのにちがいない。あいつはさっき発令された非常事態に深い関係を持っているのだ。ね、ほら。あいつの持っていた長い筒ね、あれは信号灯だよ。あれを使って、このガン星の中にもぐりこんでいる陰謀団に合図をしていたのにちがいない。すぐ取押えて、つきだしてやらねばならない」
三根夫は、ガスコが地球人のくせに、こんなところで地球人の面《つら》よごしになるようなことをして、すこしも恥じないのをこのまま見のがしておくことはできなかった。
「いや、それはよしたほうがいい。ここでガスコをおさえると、わたしたちがなぜこんなところへまぎれこんでいたかと、ぎゃくにこっちが牢の中へぶちこまれますよ、それよりも、一刻もはやく下街《したまち》へもどることにしましょう」
ハイロのいうことは、理屈にかなっている。三根夫は腹が立って立って、ガスコをなんとかしないと腹がおさまらなかったが、このハイロのことばにしたがわないわけにいかなかった。
二人は階段をおりた。吊り橋のような廊下には、ガン人たちが真剣な顔付になって、あるいは左へ走りあるいは右へ走りして、大混乱をきたしている。
「さあ、はやくヘリコプターのところへいきつかないと、誰かに使われてしまうかもしれない。さあ、はやく」
ハイロはそういって、三根夫の手を痛いほど握ると、人波をわけて矢のように走った。
走りながら三根
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