とは。
「うわーッ。地球だ。なつかしい地球だ。これはどうしたというんだろう!」
 三根夫は感激のあまり、とうとう大きな声をだしてしまった。
 ハイロが、あわてて三根夫のそばへかけよったが、それはもうおそすぎた。


   意外な相手


(しょうがないねえ。だから、あれほどやかましくいっておいたじゃありませんか)と、いいたげに、ハイロは三根夫の口をおさえつけ、そして三根夫の腕をしっかりつかまえて、いそいで階段をおりようとするのであった。三根夫は、なつかしい地球に見とれていて、その場を動くのがいやらしい。
(だめですよ。いまのうちに、さっさと逃げださないと、いまのあんたの声を聞きつけて、武装した監視隊員が逃げ路をふさいでしまいますぜ)
 ハイロは、そういいたい気持でいっぱいだった。ぎゅうぎゅうと力をこめて、三根夫を階段のおり口へひっぱっていこうとする。
「こらッ、何者だ。そこ動くな」
 とつぜんひとりの大きなガン人が姿をあらわして、三根夫をつかまえた。
「しまった」三根夫は舌うちをした。それが、いっそういけなかった。
「おや、おまえは地球人だな。地球人が、許可なしでこんなところをうろついているなんて、けしからんじゃないか。おい、面をぬげ」ガン人は、三根夫のかぶりものの上から、ぼこぼことたたいた。じつに、するどく耳のきくガン人だった。
「まあ、待ってください」ハイロが、三根夫をうしろにかばってまえにでた。するとガン人は、ハイロをなぐりつけようとした。ハイロは、あやういところでそれをさけた。
「まあ、待ってください。この者は、地球人ではなく、やはりガン人なんです。しかし口はきけなくて、そのうえに耳は聞こえないですから――」
「ばかをいうな。ごま化されんぞ。地球人にちがいない。その証拠には、そやつは地球人のことばで二度も叫んだじゃないか。さあ、正体をあらわせ」
 そういうと、ハイロよりも背の高いそのガン人は、ハイロの頭越しに両手をのばして、三根夫のかぶっているお面の両耳をつかむと、手前へひっぱった。お面はすっぽりとぬけて、下から三根夫のまっ赤《か》な額《ひたい》があらわれた。
「やっ、きさまはテッドの部下の三根夫という子供だな。いよいよけしからんことだ。なにしにこんなところへきたか」
 そのガン人は、三根夫を知っていた。間にはさまっていたハイロは、これはめんどうなことになっ
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