おもしろく思ったから、三根夫に答えてやることになったのであろう。
(なるほど。そうかい)
三根夫は、やはり手まねであいづちをうった。ハイロの手まねの全部がわかったわけではないが、そうしないとハイロが手まねのおしゃべりをやめてしまうおそれがあったから、ほどよくあいづちをうったのである。それで、ハイロの手まねをかいどくして、わかったように思うことは、この天蓋をつくっている壁体はすくなくとも三重になっているらしい。中は袋のようになっていて、そこの中に原子力であたためられた或るガスがつまっているらしい。そのガスは、ぎっしりと袋の中につまっているので金属とおなじくらいに固く感ぜられる。その外に、あと二重に樹脂のような生地の袋がかぶさっていて、ガスが外へもれることをふせぐと共に、外部から砲弾などをうちかけられても、はねかえす力を持たせてあるものらしい。
らしい、らしいの話ばかりで、正確なことはわからないのが残念だが、いずれ町へかえってから、ハイロにたずねなおせばいいであろうと、三根夫はがまんした。そして残りの階段をひと息にのぼり切っていよいよ一番高いところに立った。それは、丸い小天井《こてんじょう》がはまっていた。その小天井は透明であった。その証拠に、天井をとおして、星がきらきら輝いていた。
(ああ、きれいだなあ。ひさしぶりに星空を見るんだ。ああ、きれいだ)
と、三根夫は、いいたいことばを口の中へおしこんで、透明天井を通して大空を仰いだ。そしてその姿勢で身体をぐるっと回転して、ちょうど百八十度ばかりまわったとき、かれはまったく意外にも、すぐ近くに、ガスタンクほどの大きさの、銀色にかがやいたすばらしい球《きゅう》が、宙に浮いているのを発見した。遊星だ。なんという大きい星だろう。かれは息をのみ、おどろきとおそれをもってその星の面を眺めたが、とつぜん三根夫は、心臓が破れるほどの第二の驚愕《きょうがく》にぶつかった。
というのは、その星の面には、模様のようなものがついていた。それは海と陸とが区別されて見えるのであった。三根夫がびっくりしたのはその模様の一つが、他のものよりもはっきりしていて、それが南アメリカの形によく似ていることだった。いや、似ているどころではない、南アメリカにちがいなかった。すると、いま目のまえに見えている星こそ、地球なのだ。地球だ。地球がこんなに近くにあろう
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