にこたえた。相手のいうことは、ようするにこの国には、きみたちの常識では解けないような、いろいろなふしぎがある。それを一度にとこうとすると、気がへんになるかもしれない。だからゆっくりこの国に滞在して、ゆっくりと疑問をといていらっしゃいといっているのだ。博士は、かるくうなずいて、相手がいったことを頭の中で復習した。これはぜひおぼえておかなくてはなるまい。
「ただ、いまのおたずねについて、これだけはお答えしておきましょう。このところが、どんなところであるかを知るには、橋をわたりエレベーターで下り、市街を歩いてごらんになると、まず、早わかりがするでしょう」
「ああ、そうですか」
「それから、わたしの姿が見えないことです、これはちょっとしたからくりを使っているのです。こっちから説明しないでも、やがてみなさんのほうが、なあんだ、あんなからくりだったかと、気がおつきになりましょう。それはとにかく、いずれそのうち、よい時期がきたらわたしどもは、みなさんの目に見えるように、姿をあらわします。それまでは、私どもの姿が見えないほうがよいと思うので、決してわたしどもは姿を見せません」
「そうおっしゃれば仕方がありませんが、もしわれわれのほうで、あなたさまに連絡したくなったとき、どうすればいいでしょう。あなたのお姿が見えなければ、あなたを探すことができません」
すると、姿なき相手は、おかしそうに声をたてて笑い、
「これは失礼しました。連絡の必要のあるときは、あなたがたは『もしもし、ガンマ和尚《おしょう》』と一言おっしゃればいいのです。するとわたしは、すぐご返事するでしょう」
「ガンマ和尚? ふーむ、ガンマ和尚とおっしゃるお名まえですか」
「そういえば、通じますから」
偵察団出発
ふしぎなガンマ和尚《おしょう》の声は消えた。
テッド博士以下は、たがいに顔を見合わせて、すぐにはことばもでなかった。さっきから、思いがけないことの連続であった。なにから話し合っていいやら、けんとうがつかない。
「帆村のおじさん」と、三根夫が、帆村荘六の服の袖《そで》を引く。
「なんだい」
「おもしろいことになってきましたね。たいへんめずらしい国――いや、めずらしい星の国へきたようですね」
「ミネ君、きゅうに元気になったね。どうしたわけだい」
「だって、この下に町があるというのですもの。それから飲食
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