ろに直径が三間もあろうと思われる穴がポカポカとあちらこちらにあいているではありませぬか。勿論穴の中には同じような青草が生え茂っていますが、此のような穴は天然に出来たとはどうしても考えられませぬ。それは恰《あたか》も空中からこの地点へ向って数多の爆弾を投下《とうか》したならば、かような大穴があくことであろうと思ったことでした。
本当は僕には、此の山の奥に訪ね登って来る迄に何もかも判っていたのです。僕の考えでは、僕の留守の室に将校達が詰めかけていた時こそは、正《まさ》に敵国人が秘密防禦要塞《ひみつぼうぎょようさい》を作っていた此の山奥の地点を、わが陸軍の飛行隊が空中から襲撃《しゅうげき》を行ったときに当るのであって、憎むべき侵略者《しんりゃくしゃ》の一団は悉《ことごと》く飛行機から打ち落す爆弾によって殺害せられたのです。而も我がセントー・ハヤオを救い出す道なく、大事のための小事《しょうじ》で、遂に尊き犠牲《ぎせい》となり、憎むべき敵国人の死骸《しがい》の間に、同じようなむごたらしい最後を遂《と》げたのでしょう。ほんとに尊い死。――彼は完全に祖国を救ったのでした。しかも彼の死たるや僕に洩し
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