たとおりとすれば彼の側には愛人の骸《なきがら》も共に相並んで横《よこたわ》ったことであろうと思われます。彼は恐らく可憐《かれん》な愛人と抱きあったまま満悦《まんえつ》の裡《うち》に瞑目《めいもく》したことでしょう。
その時、僕が掘りあてたのは、この半ば爆弾に溶かされた加減蓄電器《バリコン》であって、セントー・ハヤオが死の直前まで、電鍵をたたきつづけた其の短波長送受信機に附いていたものであるに違いありません。云々。
* * * *
亡友Y――は斯う語って、この壊れた加減蓄電器《バリコン》を私に手渡したのです。ひどい肺結核に襲われている彼の細い腕は、その時このバリコンをすらもち上げる力が無かったようでした。それもその筈です。この物語を聞いた日から三日のちにY――の容態《ようたい》は急変して遂に白玉楼中《はくぎょくろうちゅう》の人となってしまったのでした。
さて私の永話《ながばなし》はこれで終りますが、貴君はこのはなしが彼の言うとおり実際あったことかどうかについて御判断がつきますか。御つきになるなればそれを誰からか、はっきり判断して貰いたがっていた亡友Y――の追善
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