だ》いたまま、地下に眠ってしまったのです。そして其の時にY――が私に残して行った不気味な遺品が、この壊れたバリコンでして、勿論《もちろん》彼の話の中に出て来る一つの証拠物《しょうこぶつ》とも言うべきものなのです。
Y――が其の時告白したところによると、謎を包んだ此の物語をはなして聞かせた人間は私が最初であり、また同時にそれが最後であるというのです。尤《もっと》もこの物語の後に於て判るように、このことがどんな事実であるかということを明瞭《めいりょう》に知っている筈《はず》の二つの関係があるのですが、これは孰《いず》れもそれ自身絶対に他へ洩らすことの許されない同じような二つの機密社会《きみつしゃかい》であるために、この驚くべき事実が他へ洩れる道が若《も》しありとすれば、それは亡友Y――によって(いやもっと詳しく言えばY――と私との二人とによって)行われるより外《ほか》に出来ないことなのでした。Y――が私以外の者に語ることを断念し而《しか》も他界してしまった今日《こんにち》、それは唯《ただ》私一人によって保たれている秘密なのです。未解決のまま残されている謎なのです。そこに私としての遺憾《い
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