加減蓄電器《バリコン》の壊《こわ》れたものなのですよ。半分ばかり溶《と》けてしまって、アルミニュームが流れ出したまま固《かたま》っているでしょう。これは何かって言うんですか?
いや実はネ、それについて一つ、取っておきの因縁《いんねん》ばなしがあるんですがネ、今日は思い切って、そいつを御話してしまうことに致しましょうか。
だが始めから断って置きますが、此の話はこれから私の言う通り全く同じに発表して貰っては私が困るのですがね。というのも実はこの物語の主人公であり、又同時に尊い実験者であるところの私の亡友《ぼうゆう》Y――が亡くなる少し前に、是非私に判断して呉《く》れという前提《ぜんてい》のもとに秘密に語った彼自身の驚くべき実験談なのでして、内容が内容だから、他へは決して洩《も》らさぬことを誓わされたものなのです。不幸なる亡友Y――は、永らくおのれが胸だけに秘《ひ》めていた解き得ぬ謎の解決を求めんがために折角《せっかく》私という話相手を選んだのでしたが、流石《さすが》の私にも彼が満足するような明答《めいとう》を与えることが出来ませんでした。それでY――は一層がっかりして謎を謎として抱《い
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