火薬船
海野十三

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)香港《ホンコン》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)祖先|発祥《はっしょう》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)本船ニ[#「本船ニ」は底本では「本船に」]
−−

   怪貨物船あらわる!


 北緯二十度、東経百十五度。
 ――というと、そこはちょうど香港《ホンコン》を真南に三百五十キロばかりくだった海面であるが、警備中のわが駆逐艦《くちくかん》松風は、一せきのあやしい中国船が前方を南西へむかって横ぎっていくのを発見した。
「――貨物船。推定トン数五百トン、船尾に“平靖号《へいせいごう》”の三字をみとむ……」
 と、見張兵は、望遠鏡片手に、大声でどなる。
 艦橋には、艦長の姿があらわれた。そしてこれも双眼鏡をぴたりと両眼につけ、蒼茫《そうぼう》とくれゆく海面に黒煙をうしろにながくひきながら、全速力で遠ざかりゆくその怪貨物船にじっと注目した。
「商船旗もだしておりませんし、さっきから観察していますと、多分にあやしむべき点があります」
 副長が、傍から説明をはさ
次へ
全133ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング