の船内をはしりまわって、なかなかつかまえられませんぜ」
「ふーん、それはお前のいうとおりだな」
と、事務長はうらめしそうなかおになって、本船の方をふりかえった。本船の甲板では、虎船長が、椅子のうえにどっかとすわって、こっちをにらんでいた。
投《な》げナイフ
「おい、こまったな。お前一つ、骨をおってくれないか」
「えっ」
「お前は竹と仲よしなんだろう。だからお前がむかえば、竹は反抗しないでつかまるだろう」
「ごめんこうむりましょう。そんなことをすれば、わしゃ、ねざめがわるいや。とらえられりゃ、どうせ竹の野郎は、死刑にならないまでも、船底に重禁錮《じゅうきんこ》七日間ぐらいはたしかでしょう」
丸本は、なかなか承知をしない。
事務長も、これにはかえす言葉もなかったが、さりとてこんなところにぐずぐずしているわけにもいかない。
「竹の刑罰のことは、おれが保証して、かるくしてやるから、お前《まえ》一つつかまえろ」
「困ったなあ。重禁錮にしない約束、くい物と酒はたっぷり竹にやってくれる約束、それなら引受けますぜ。わしゃ計略《けいりゃく》をもって、竹のやつを縛っちまいまさあ」
「く
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