て貴様にめいずる。只今からのち貴様は本船内で一語も喋《しゃべ》ってはならん。しかと命令したぞ。下へいって、謹慎《きんしん》しておれ」
船長は竹見に対して、たいへん不機嫌をつのらせるばかりだった。
一体竹見は、なぜ下船したいなどと、とんでもないことをいいだしたものであろうか?
意外な人物
ノーマ号では、飲料水などを、平靖号が頒《わ》けてやってもいいという返事に、いろめきわたった。だが、ノーマ号からボートを下そうといったのに対し、平靖号は、こっちが品物をボートに積んでそっちへいくといって聞かないので、ちょっと当惑をしたらしく、しばらくは、その返事をよこさなかった。
やがてのことに、やっと応諾《おうだく》の返事が、ノーマ号からあがったので、いよいよ事務長はボートを仕立てて、六人の部下とともに海上に下りた。
事務長は、みずから舵《かじ》をひいた。
飲料水と野菜と果実とは、舳にあつめられ、そのうえに大きなカンバスのぬの[#「ぬの」に傍点]をかぶせてあった。
虎船長は、本船をはなれていくボートをじっとみていたが、側をかえりみて、
「おい、一等運転士。あの荷は、ばかに大き
前へ
次へ
全133ページ中20ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング