うして五千メートルぐらいに近づいている」
「ノーマ号と、船名がついていますぜ、一体なにをつんで、どこへいく船なのかなあ」
「きっと軍需品をつんでいるよ、あのかっこうではね。たしかにあやしいことは素人《しろうと》にもそれとわかるのに、ノールウェーでは、海軍さんも手の下《くだ》し様《よう》がないんだろう」
「残念、残念。宣戦布告がしてないと、ずいぶんそんだなあ」
幹部たちは、ノーマ号と名のるノールウェー船のうえに、すくなからぬ疑惑をもって、ざんねんがったのである。
はたして、一同が見ているうちに、わが駆逐艦松風は、ノーマ号からはなれ、舳《へさき》をてんじて北の方へ快速力で航行していった。
ノーマ号も、その後を追って北上するかとおもわれたが、どうしたものか、急に針路をかえ南西に転じた。
「あれっ、こっちと同じ方向へいくぞ!」
事務長が、目をぱちくりとやった。
「おい、へんだぞ。ノーマ号は、一向前のようなスピードを出さないじゃないか」
足のない虎船長がさけんだ。
「これじゃ、間もなく本船は、ノーマ号においついてしまいますよ。なにかむこうは、かんがえていることがあるんですな」
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