の濃いカマキリのような男――あの鼠谷仙四郎の幽霊が突っ立っていた。
「やア甲野君」
 とその怪物はニヤニヤ笑いながら声をかけた。
「キ、キミは誰ですウ――」
「誰だとは、弱ったネ」と怪物は一向弱っていなそうな顔で云った[#「顔で云った」は底本では「顔を云った」]。「僕は君と中学校で机を並べていた鼠谷……」
「鼠谷君なら、もう死んだ筈だッ」
「そいつを知っていりゃ、これからの話がしよいというものさ。はッはッはッ」と彼は妙なことを云った。「なぜ死んだ人間が、生き返って君達に逢うことができるのか――そいつは暫《しば》らく預かっておくとして、もしそんなことが出来るとしたら、君はそれがどんなに素晴らしい思いつきだと考えないか」
「くだらんことを云うな。幽霊なら、ちと幽霊らしくしたらどうだ」
 と八十助は云ったものの、自分の方が随分下らんことを云ったものだと呆《あき》れた。
「まアいい。僕が幽霊だか、それとも生きているか、それは君の認識に待つこととして、僕は一つ君に聞いてみたいことがある」
 幽霊にしては非常にしっかり[#「しっかり」に傍点]したことを云うので、八十助はもう何がなんだか判らなくなっ
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