、これこそ丸木であったのである。
「おい、丸木。きさまよく逃げおったな」
博士は叱りつけるように言った。
すると丸木は、ふてぶてしく、むぎわら帽子をゆすりあげて、
「逃げたわけではない。この火星に、もどって来た方が得だということが、わかったからだ」
「ふん、負けおしみを言うな」
と、博士がやりかえした。
「負けおしみではない。げんに、おれは、こうして博士よりは、得な立場に立っているのだ。ふふふふ」
「得な立場だって。なにが得な立場だ。きさまを、やっつけようとすれば、すぐにも、やっつけられるのだ。大きなことを言うまいぞ」
博士は、丸木をたしなめた。
「なに、大きなことを言うなだって。ふん、それはこっちで言うことだ。地球の人間がこの火星にやって来て、大きな顔をしているやつがあるかい。お前たち三人を、やっつけるなんて、それこそ一ひねりでいいのだ」
丸木も、なかなか負けていない。
だが、蟻田博士は、そんなおどかしに、びくともせず、
「おい、丸木よ。からいばりは、もうよして心をあらためてはどうか。一体、火星の生物が、地球の人類よりもえらいと思っていることが、あやまりだったと、はっきり
前へ
次へ
全636ページ中592ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング