った。いつの間にか、丸木が帰って来ていたのだった。
「ああ、丸木さん。どうしたの」
「どうしたって、ふふふふ」と、丸木は、へんな笑い方をして、「お金はこんなにある。さあ、これを持っていって、あの薬屋で、ボロンの大壜を三本買ってくれ」
 そういう丸木の手には、たくさんの紙幣《さつ》が握られていた。不思議なことである。どこでこんな大金をつくったのか。
 どこから手に入れたか、丸木の握っている大金!
「丸木さん。このお金は、どこから持って来たんですか」
 千二は、息をはずませて、たずねた。
「ふふふふ。さっき、洋装の美しい女がいたのを、知らなかったかね。あの女が持っていた金だよ」
「はあ、そうですか。あの女の人が、丸木さんに貸してくれたというんですか」
「貸してくれたって。いや、ちがうよ。あの女の持っていたのを、こっちへもらって来たんだ。そんなことはどうでもいいじゃないか」
「すると、丸木さんは、あの女の人から、お金を取ったんですね。女の人は、きっと怒ったでしょう」
「ふん、怒ったかどうだか、ちょっとなぐりつけたら、おとなしくなって、地面に寝てしまったよ」
「えっ、そんなことをしたんですか。
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