月と、月の面は少しもかわったことがない――と、そう思った人々は腹立たしさを感じた。いよいよ矢ヶ島天文台の台長のため、一ぱい食わされたかと思ったからである。
ところがその中に、
「おやおや、どうもおかしいぞ!」
と、首をひねった熱心な素人天文家が二、三いた。
「どうもおかしい。スミスの海が、すっかり見えなくなった。おやおや、これは今まで地球からは見えなかった月の面が、あそこのところへ見え出したぞ。そうだ、あの山なんか始めてお目にかかる山だ! これは不思議だ」
不思議なことである。これがほんとうなら、月はこのところ急に地球に対して、少し軸をかえたらしいのである。
果してそれにまちがいなければ、たしかに月は異常運動を始めたのである。一体それは、これからどんな影響を我が地球の上におよぼすのであろうか。
矢ヶ島運動――と、後になって、この変な月の運動のことを呼ぶようになった。
(妖星モローが、一たび地球に襲いかかると、月さえ怪しげな運動を始める。何という歎かわしいことか!)
そんな風に、矢ヶ島運動のことを歎く人もあった。
さすがの蟻田博士も、このことには気がつかなかった。ちょうど博
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