る。
「あっ、例の怪しい声だ!」
 千二の胸はどきどきして来た。それとともに、珍しいにおいが、ぷんぷんにおうのであった。
(うむ。丸木さんが、さっき言ったが、火星の生物が、袋の外に集って来たのに違いない。あの、ひゅうひゅうという口笛を吹くような声、それからこの気もちの悪いへんなにおい、この二つが見附かると、そこに火星の生物がいると考えていいんだ)
 千二少年は、たいへん大事なことを知った。これから、この二つのことに気を附けていると、そこに、火星の生物がいるか、いないかがわかると思った。
 それにしても、丸木のおじさんという人は不思議なおじさんである。火星の生物と、おそれ気もなく話をしている。一体、このおじさんは、何者なのであろうか。この次によく尋ねてみることにしようと、千二は思った。
 丸木のおじさんと火星の生物との話は、しばらくしてすんだらしい。丸木のおじさんは、火星語が出来るようだ。例のひゅうひゅうとしか、聞きとれない言葉である。
「おい、千二。しばらく目が廻るかも知れんが、我慢しろよ」
 突然、丸木の声が聞えた。
 目がまわるかもしれないが、がまんをしろと、丸木の注意である。
 
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