手を目のところへもっていった。目をこすろうとしたのだ。ところが、おどろいた。ちょうど目の前が、ゴム毬を半分に切ったようなやわらかいもので、蓋をしたようになっている。
「こんなもの!」
と、千二は、そのゴム毬の半分みたいなものを、むしり取ろうとしたが、つるつるすべるだけで、そのもの自身は、かたく目を蓋していて、取れない。
「あははは。何をしているのか。お前の力ぐらいでは、取れやしないよ。さあさあ、しばらくの間だ。がまんしろ」
そう言うと、丸木は、千二の背中をどんとついた。千二は、あっと言って、たおれた。その時、何だか、ばさりと音がして、千二の首から下を包んでしまったものがある。
千二は、目かくしをされたまま、袋のようなものの中に入れられた。
どうなることかと、彼は気が気ではなかった。
そのうちに、丸木が、
「どっこいしょ」
と、かけごえをしたと思うと、千二の体は袋にはいったまま宙に浮いた。
それから丸木は、歩き出した。
千二の体は、袋の中で、たいへん揺れた。
しばらくすると、袋のまわりにひゅうひゅうという鳴き声が、集って来た。ひゅうひゅうひゅうと、しきりに鳴き合わせてい
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