、また地球にまいもどるのですか」
「ふふん、それはまあ、なんとでも考えるさ。とにかく東京までいこうじゃないか。今すぐお前を元気にしてやるから、待っていろ。元気にしてやらないと、途中で歩けなくなっては困るからね」
 大男は、向こうへいこうとする。それを見て千二は、うしろから呼びかけた。
「おじさん、ちょっと待ってください。おじさんの名前は、なんというのですか」
「おれの名前か。それは――」
 と、かの大男は、背中を見せたまま、だまって立っていた。すぐには、名前が出て来ないらしい。
「おじさんは名前がないのですか」
「ばかを言え。おれの名前は……」
 と、彼はうなっていたが、
「そうだ、おれの名前は、丸木《まるき》というんだ。丸木だ。よくおぼえておけ」
 そう言うなり、丸木と名乗る大男は、うす桃色の湯気《ゆげ》の彼方に、姿を消してしまった。
 あとには千二一人がのこった。あいかわらず、寝かされたままである。からだは、やはり思うように、うごかない。一体どんなものをつかって、自分のからだを縛ってあるのか、それをたしかめるために、首をもち上げようとしたが、首がじゅうぶんに上らない。のどのところも
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