そのきみのわるい大男は言うのであった。とんでもないことだと、千二は心の中で思ったが、口に出しては、この大男をおこらせるだろうと思って、やめた。
「おじさんは、ほんとうに人間ですか」
「そ、それにちがいない。なぜ、そんなくだらんことを聞くのか」
「でも、変ですね。火星のボートの中に、地球の人間が一しょにいるなんて」
千二は、生まれつき胆はふとい方だった。始めは、びっくりして、すこし、あわてていたが、だんだん気が落ちついて来た。
「べつに、変なことはない。まあ、そんなことはどうでもいいじゃないか。おれのたのみを聞いてくれれば、たくさんお礼をするよ」
「さっきから、たのみがあると言っているのは、どんなことですか」
こんなきみのわるい男にたのまれる用事なら、どうせ、ろくなことではあるまい。
「なあに、ちょっとした買物があるんだ。くすりを買いたいんだ。それについていってもらいたい」
「えっ、くすりの買物? どこへ買いにいくのですか」
「どこでも近いところがいい。たくさんくすりを売っているところがいいのだが、東京までいった方がいいだろうね」
「東京? へえ、東京ですか。ははあ、すると、僕たちは
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